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平成11年9月30日、茨城県東海村にある(株)ジェー・シーオー(JCO)ウラン加工施設において臨界事故が発生しました。このウラン加工施設は、核燃料サイクルの中の再転換と呼ばれる工程を行う施設です。この事故は、わが国で初めての臨界事故であり、ウラン核分裂連鎖反応である「臨界」状態が約20時間にわたって継続し、施設周辺住民の避難や、施設から半径10キロメートル圏内の住民の屋内退避を行うに至ったものでした。
そして、臨界に伴い発生した放射線により、現場にいた作業員が被ばくし、死亡者が出ました。さらに、従業員、防災業務関係者、周辺住民等多数の人々に被ばくが確認されました。なお、施設の外に放出された放射性物質のレベルは十分小さく、住民の健康や環境に影響を及ぼすものではありませんでした。また、農林畜水産物等について採取・分析をした結果、影響はみられず、安全であることが確認されています
事故の原因
事故を起こした転換試験棟では、核燃料サイクル開発機構(現在:日本原子力研究開発機構)の高速実験炉(常陽)の燃料に用いる濃縮度18.8%の硝酸ウラニル溶液の濃度を均一化するという作業で正規の手順を逸脱し、ステンレス容器でウラン粉末を溶解した上、臨界管理のために規定量が制限されている沈殿槽に規定量の2.4キログラムを超える約16.6キログラムの硝酸ウラニル溶液を入れたため、臨界に至りました。
事故は、国の許可を得た設備や方法による作業とは異なることを行ったため生じました。作業手順を無視し、臨界管理の上で規定されている制限量をはるかに上回るウランを投入したことが直接の事故の原因となりました。その背景には、作業員の臨界に関する認識不足、企業における人員配置、教育等のマネージメントの問題があった可能性が指摘されています。
国の対応
今回の事故を受けて、原子力安全委員会は、ウラン加工工場事故調査委員会を設置、平成11年12月には最終報告書を取りまとめています。最終報告では、事故の再発防止に向けた取り組みとして、原子力事業者における安全確保の徹底、安全規制当局の体制の強化、原子力安全委員会の独立性の強化などが必要であるとしています。また、今回の事故を契機に、安全文化の定着・浸透に努めることが一層強く求められており、こうした理念の下「安全社会システム」を目指さなければならないとしています。
事故を教訓として、政府は、原子力の安全・防災対策の強化・充実を図るため、原子炉等規制法の一部改正案および原子力災害対策特別措置法案を平成11年12月に成立させました。これらにより核燃料加工施設にも原子力発電所と同様に施設の定期検査を義務づけるとともに、事業者の保安規程遵守状況に関する検査制度の創設(保安検査制度)、原子力保安検査官の配置、さらには、原子力防災における初期動作の迅速化、国と地方公共団体との連携の強化、国の緊急時対応体制の強化、事業者責務の確保等を図っていくこととします。
事故による放射線影響等
原子力安全委員会では「健康管理検討委員会」を設置し、今回の事故で被ばくした周辺住民、防災業務関係者等の線量評価の結果を踏まえた健康管理の在り方等について検討を行いました。同検討委員会では周辺住民等の放射線影響について、影響が発生するレベルではない、あるいは、放射線が原因となる影響の発生の可能性は極めて小さく、影響を検出することはできないとしています。
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