広報誌195
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コンブの「アルギン酸」がゼリー状に固まるヒミツアイス7 アロエやコンブなどを包丁で切ると、切断面からゼリー状に固まったぬめり成分が出てきます。 なぜ、ゼリー状に固まっているのか、そのヒミツに迫りましょう!づめ科学の福井県の 海藻 アロエ、山芋、またコンブなどの海藻には、特有のぬめり成分があります。この成分の正体は、「マンナン」や「アルギン酸ナトリウム(アルギン酸)」。「マンナン」は、アロエや山芋に含まれている物質です。一方、コンブなどに含まれている「アルギン酸」は、カルシウムなどのミネラルと反応して、ゼリー状に固まります。これらは、ゲルの一種で、生物が生きていく上で大切な水分を体内にため込む役割があります。 私たちの身の回りにある物質は、大きく分けると固体・液体・気体の3種類の状態に分けられます。一方、ゼリーなどのように、弾力があり、力を加えると簡単に形が変わるものは、固体と液体の中間の性質を持っています。このような物質は「ゲル」と呼ばれ、右図のように分子が網目状につながり、水分を閉じ込めて固まっている状態です。 福井県の沿岸には、200種以上の海藻が生育しています。体の色によって緑藻、褐藻、紅藻に分かれます。体の色と生息場所には関係があり、緑藻は浅いところ、紅藻は深いところ、褐藻はその中間に生えています。コンブやワカメに代表される褐藻類は、「アルギン酸」の原料です。県内では、クロメ(コンブの一種)やモズク、マメダワラなどが生えています。自然に学ぶテクノロジー 「アルギン酸」をカルシウムなどと反応させて、ゼリー状に固まる性質を利用し、薬や細胞等を一緒にカプセル化して固めることができます。 カプセル化した薬は、大きさを自由に調節できるため、患部だけに狙いを定めて、効果を発揮することができます。 また、生きた細胞の入ったカプセルを3Dプリンターを使って積み上げて、立体的な組織から臓器まで作ることができると期待されています。人工臓器アロエやコンブ固まるしくみ 塩化カルシウム水溶液(カルシウムイオンが溶けている水)に、細胞が入った「アルギン酸」を3Dプリンターで打ち出すと、次々と固まり、立体的な構造を作り上げる技術が開発されました。 人工的に作ることができる人の生体組織は、これまで1種類の細胞でできた単純なものに限られていました。しかし、この技術によって、様々な種類の細胞を適切な配列に並べると、生体に近い複雑な臓器を作ることができるのではないかと考えられています。現在、ゲル素材の改良が進められており、培養して増やした自分の細胞を使って拒絶反応の少ない人工臓器を作る研究が、本格的な実用化に向け進められています。 海の中で、アルギン酸ナトリウムは、アルギン酸イオンとナトリウムイオンに分離します。分離したアルギン酸イオンは、海中のカルシウムイオンを橋渡しにして、網目状に結合します。その時、水分子を抱え込みながら、ゼリー状になります。3Dプリントされた人工臓器クロメモズクマメダワラここがポイントここがポイントここがポイントここがポイント固固例えば、がんに効く薬を小さくカプセル化して血管に送り込むと、正常な細胞の間をすり抜けて、がん細胞だけに届けられ、効果を発揮します。「アルギン酸」は、水溶液中で丸く固まります。それを1つずつ積み重ねて、血管に似た二重構造のチューブを作ることに成功しました。塩化カルシウム水溶液ジュースゼリーゲルはとても柔軟で、簡単に形が変わるよカルシウムイオンアルギン酸イオン水分子3Dプリンター細胞を含んだ「アルギン酸」正常細胞がん細胞カプセル薬の場合ままるるアロエ〔表紙写真 : アロエ (開花時期は冬)〕コンブ液体の場合ゲルの場合固体の場合写真提供 : 福井県水産試験場
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